雷害対策の目次 雷の侵入経路と接地対策
雷害と呼ばれる雷による被害には大きく分けて2つあります。 雷が直接対象物に命中する直撃雷と、雷の電流が電源線、電話線、各種信号線、同軸ケーブルなどの回線から誘導され侵入し、機器などを破壊する誘導雷サージの二つがあります。 電子機器やパソコンなどが雷により破損する被害は、誘導雷サージに起因するものが大半であると言われています。その理由の一つは遠くで落ちた雷がその周辺に数多く存在する回線を伝って建物内の機器に侵入してくるからです。 誘導雷サージは外部から回線を通じて建物内に侵入してくる性質上各回線の入口に避雷器を設置し、侵入される前に大地へ逃がすことで、電子機器やパソコンなどを守ることが避雷器を使った雷害対策となります。
(図1)誘導雷サージの主な侵入経路
【1】アンテナから
建物に備え付けられたアンテナなどから回線を伝って建物内部に直撃雷サージが侵入してきます。
【2】接地から逆流
雷のエネルギーは地面に逃がされた瞬間に消滅するものではありません。地中内で拡散して弱くなっていきます。 避雷針や建物周辺の樹などに落雷し、接地(Earth)から地面に誘導雷サージが逃がされた際に、近くに別の接地(Earth)があるとそこから建物内部に逆流してくることがあります。
【3】外部ケーブル類から
電話回線・信号線・同軸ケーブル・電源線などに落雷した場合、いずれかの回線を伝って建物内部に直撃雷サージが侵入してきます。 また施設内の別の建物とケーブルなどが繋がっている場合、Aの建物に侵入した雷サージが回路を伝ってBの建物内部へという風に侵入してきます。 雷害を防ぐために高性能の避雷器を設置することは大事なことですが、それ以前に重要なことは適切な接地工事です。両者があいまって初めて確実な効果を発揮いたします。

1. 接地工事を確実に

1)接地抵抗の低減を図るために、最低100Ω以下にすること。 2)避雷器と電子機器は必ず連接接地すること。(機器の追加、増設工事の際に洩れる場合がある) 3)接地線はできるだけ短く、長々と引っ張り回さないこと。

2. 接地の改善

(図2)ボンディング接地
接地を良くすることで避雷器もより効果を発揮することができます。接地電位を変動しにくくするために良好なアースを取ることが大事です。良好な接地とは、直流抵抗値が低く、なお且つ交流抵抗値も低いこと。 つまりインピーダンスを小さくすることが大事です。 アース線が5m以上になれば薄い板状の銅バーに交換することが望まれます。板状のアースにすることでリアクタンスが小さくなり、アース電圧の変動を小さくすることができます。

3. シールドを確実にする

(図3-A)シールドを確実にする
雷サージが誘導しないように制御線など電線類はシールド線を使用するか或いはシールドして、且つ両端で接地する。(図3-A)これにより、電線類は等価的に地球と同じ電位になり、雷サージを誘導しにくくなります。
(図3-B)片側が解放されている場合
片側が開放の場合、開放端のインピーダンスが上昇し、ここで放電する可能性があります。(図3-B)非接地端より回線への放電を避けるため、酸化亜鉛式素子で対応してください。(詳しくはSE-100仕様書PDF参照)
立地条件による被害例
大地間の電位差によるサージ電流の逆侵入について
大地間の電位差
落雷した所と離れた所では必ず、大地間に電位差が生じます。夏は雷雲より、冬は大地よりエネルギーが放出され、どちらかの電位が高いか低いかは状況により違いますが、いずれにしても雷雲と大地間でエネルギー交換があり、電位の上昇した方から電子機器に侵入して遠地の低い方へ流れ込む回路ができます。
その間の電子機器の耐電圧が侵入したサージ電圧に対して、どの程度まで対応できるかが問題となります。

対策と条件
  1. 機器の回路と筐体の絶縁耐圧が高いこと
  2. 機器の入出力のサージ耐電圧が高いこと
  3. 避雷針アースや高圧電力アースと接地共有しないで、できる限り離して接地すること
落雷箇所からアース端子の距離を取れば逆流雷の影響は小さくなります。
3線式電源用の中性点の破損について
電源供給側から侵入した際、中性点ラインから侵入する過電圧はアースに流れ、中性点への負担は軽減されますので本来は被害に合いにくい箇所と考えられます。
それでも中性点である避雷器のL2-E間が破損するケースが多い場合はどのようなことが考えられるのでしょうか?

①中性点が接地されている場合

中性点が壊れやすい場合は「逆流雷」が原因である可能性が高いと考えられます。
アレスタD接地と距離が近い場合、逆流雷の電位差で中性点が被害に合う可能性があります。

②接地を分けている場合のGとGaの距離

機器の接地と避雷器の接地を分けている場合、電位差が生じた際、機器が破損する可能性があります。
一般DとアレスタDを分けずに渡り配線をお勧め致します。
渡り配線をすることで機器と避雷器が等電位となり、逆流雷を防ぐことができます。

③避雷針接地との距離

避雷針の接地が周囲のD接地箇所に近い場合、逆流雷が発生します。
接地端子の距離を離した方が良いと思われます。